ふるさと古寺巡礼 ―印旛・香取、古寺名刹の世界―

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長熊廃寺跡「木漏れ日の参道」

「木漏れ日の参道」

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長熊廃寺跡
佐倉市長熊
創建・白鳳時代、法起寺式伽藍配置・山田寺式瓦

撮影・平成11年12月19日
4×5判 90mmF5.6 F22 1/4秒 EPP

撮影ノート

長熊廃寺跡は、木下廃寺跡と同じ、法起寺式伽藍配置をもった古代寺院跡です。昭和26年から行なわれた発掘調査では、金堂、塔、中門、南大門、回廊の跡が確認されています。千葉県内の古代遺跡で、これだけの遺構が確認された例は少ないのです。また、出土した古瓦からも、白鳳時代の建立が裏付けられたのでした。

寺院跡の入り口には立派な鳥居があります。木立の中の長い参道を進んで行くと、林の中に長熊麻賀多神社と五良神社が鎮座しています。廃寺跡の大きな石碑と、金堂跡などを示す小さな石柱もあるのですが、その寺跡はすべて土中に戻されており、今は木漏れ日の下で静かに眠るのみなのでした。

以前、龍角寺伝説の中の「龍尾寺」は、今は八日市場市のものと考えられているが、印旛地方にもあるのではないか、という話を霊光館の小倉氏から伺ったことがありました。その時、印旗にも龍尾寺があるとすれば、それは、この長熊廃寺跡ではないか、と想像をたくましくしました。竜角寺と同時代の寺院であり、印旛沼を竜腹寺とぐるりと囲む形になる位置にある、と思ったのです。しかし、そんな勝手な想像も、現地の空気を吸っていると、どうでも良いことに思えてくるのでした。むしろ、木下廃寺跡にしても、長熊廃寺跡にしても、その名称が現代に伝わっていないことにこそ、隠された意味があると考えるべきではないでしょうか。

撮影は木漏れ日を利用して行なおうと考えました。何度も通う中で、木立と落ち葉で覆われた参道に着目しました。撮影してみると、参道が、まるでトンネルのようで、さながら古代へと誘うタイムマシンのようになっています。