ふるさと古寺巡礼 ―印旛・香取、古寺名刹の世界―

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三重塔「降臨のとき」

「降臨のとき」

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撮影・平成11年4月30日
210㎜F5.6 F22 1/15秒 E100s

撮影ノート

本堂のある平地は周囲の台地上の面よりも低くなっています。これは、元々このような平地があったのではないと思います。北総台地では台地上の平面と台地下の平面、このどちらかしかないからです。ゆるやかな傾斜地でさえ、何らかの人工の跡と思われるのです。

成田山ではこの構造のために、折角の三重の塔も、外部からは全く姿を見ることが出来ません。しかし、他の台地上の寺院で、台風により七堂伽藍倒壊などという例があるとのことで、それを避けるためではないかと思っています。

装飾の見事な三重の塔ですが、この地形のために日没まで日があたるのは、日の長い時期でなければなりません。そして、晴天ではあっても、多くの日は排気ガスなどのために、クリアな太陽光線が最後まで続くことのない昨今です。冬が一番良さそうに思えますが、日の短い季節では出世稲荷の台地によって、太陽は軒下までは登ることはありません。その、日没まで強い太陽光の差し込む日を求めて、夕方になると三重の塔前に通ったのでした。

この撮影は、扉の上の碁を打つ人物を照らすまで太陽が沈んで、かつクリアな夕日の差す日を待っておこないました。金の装飾が施され、逆光に輝く条件下での撮影は、いつも露出の決定に緊張を伴います。しかし、それを写すのがまた、醍醐味でもあります。4×5による描写は大きくプリントして、近寄って目をこらしても、その精緻さで裏切ることはありません。