松虫寺「暮れなずむ仁王門」

撮影ノート

松虫寺は天平17年(745)、行基によって開創された古剰です。聖武天皇の皇女、松虫姫が重い病に臥した時、下総国萩原の薬師仏に詣でよ、とのおつげがありました。そこで、はるばる萩原の地にやってきて薬師様に祈ったところ、満願の日に病は平したのだといいます。喜んだ天皇は、行基に命じて一宇を建立させました。それが松虫寺だというのです。しかしながら、この伝承では、萩原にはすでに薬師様が存在しています。龍腹寺の前身が印西地蔵堂であったのと同じように、ここ萩原にも「薬師堂」があったのでしょう。奈良の都まで霊験を知られた薬師様は、いったい、誰の開創によるものなのでしょうか。松虫姫伝説には、深い謎が隠されているのだと思います。

今、訪ねてみると、仁王門と本堂がありますが、本堂は右に傾いています。年月というものの非情を感じます。本尊は木造薬師瑠璃光如来座像であり、ほかに六体の如来立像があって、七仏薬師は平安時代後期の作です。全国に二例しかない貴重なもので、重要文化財になっています。33年に一度、ご開帳されます。

組合の役職を辞し、古寺巡礼の撮影にとりかかろうとした私は、4×5の木製暗箱を愛車に積んで、周辺の古寺をめぐっては作品の着想を求めていました。しかし、なかなか良い絵が浮かばず、果たして作品を撮ることが出来るのか、思い悩む日々が続いていました。年が明けて、たまたま空いた時間に友人と訪れた時、夕日に染まる仁王門に感ずるものがあって、急いで三脚を立てたのでした。こうして、この作品が「ふるさと古寺巡礼」の記念すべき第一作となって、この後、次々と撮影の着想に恵まれたのでした。

松虫寺「暮れなずむ仁王門」
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摩尼珠山医王院松虫寺
印旛村松虫
創建・天平17年(745)
真言宗豊山派
本尊・薬師如来

撮影・平成9年1月4日
4×5判 180mmF5.6 F22 1/4秒 EPP
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