ふるさと古寺巡礼 ―印旛・香取、古寺名刹の世界―

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地蔵寺「藪向こうの地蔵堂」

「藪向こうの地蔵堂」

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金龍山宝泉院地蔵寺
印西市別所
天台宗
本尊・地蔵菩薩

平成15年9月5日
210㍉F5.6 F22 1/8秒 E100s

撮影ノート

別所廃寺跡の撮影を終え、地図を見ると近くに「地蔵堂」があることに気がつきました。林の向こう、車で移動して探しあてると、仁王門と鐘楼、お堂のあるこぢんまりとしたお寺です。調べてみると9世紀にさかのぼる、慈覚大師の創建による古寺であることが分かりました。

寺伝では、中世には七堂伽藍、寺中八ヶ寺のある東国一の霊場だったとされます。戦国時代末期、北条方についた臼井城主の原氏に焼かれてしまい、江戸時代には既に、その面影をたどることの出来ない状態となっていたようです。しかし中世の繁栄ぶりは、同じ別所の木下廃寺跡の存在と重なる、この地の仏教文化の存在、伝統をうかがわせるものです。地蔵堂のあるところの小字地名を「堂後」と言い、東側の畑は「大門」という小字になっています。

60年に一度、ご開帳される木造の地蔵菩薩は、平安末期から鎌倉初期のものであり、「脱衣婆座像」も鎌倉時代後半期のものと鑑定されました。この鑑定をした早稲田大学の桜庭裕介氏は、仁王門の倉庫にある昔の仁王様も「千葉県で最も古い仁王尊ではないか」と語り、大切に保存するよう、求めたとのことです。(松本隆志著・下総地方史の発掘)

何度通っても良い構図が見つからず、撮りあぐねていました。まだ暑さの残る9月のある日、夕刻になって枯れ始めた藪を前景として、かつての栄華を失った無情を表現しようと思いました。撮影してみると9月の夕陽は明るく、暖かみが感じられます。